「健康は血液から」。
人間は食べた物が消化されると、腸から栄養やエネルギーのもとが吸収されて、血液に入る。そして、栄養分や酸素が血液にのって、それぞれの細胞に運ばれていく。
「たとえて言うなら、血管が道路で、血液は車です。それにのっているのが、酸素や栄養や糖分で、それぞれが目的の細胞に栄養分を届けています。車だと、道がでこぼこであったり、どこかで崖崩れをしていたら、通れなくなります。また、いくら道がきちんとしていても、車がメンテナンスをしていなくては、途中でエンストして止まってしまいます。それとまったく同じで、血管と血液をきちんとしておかないと、体のどこかにひずみが出て、病気になります。
それらをしっかり支えているのが、毎日の食事です。食べ物を消化・吸収する消化器を、きちんとしておくことが大切です。いくら血液をきれいにしても、毎日の食事がいい加減だと血液が良くなりません。
うちの店のコンセプトは、食べ物をきちんとして、血液の流れをきれいにする。シンプルですがこの二つが大切だと考えています」
親泊さんの店は、オープンスタイルの気さくで開放的なつくりだ。店の中央にはまるい木のテーブルが置かれ、通りがかりの人が気軽に健康相談へ訪れる。店頭には、年輩の方が休憩するのに便利な木のベンチも置かれ、街のゆんたくスポットとしても愛されている。

親泊さんは那覇市で生まれた。
沖縄から遠く離れた世界を見たくて、北海道の大学に進学した。卒業すると帰沖して、松山の問屋街にある呉服店で働いた。しかし、国際通りで薬店を経営する父が体を壊し、店を続けることが困難になった。
「長年続けた商売で信用を得て、それを閉めるのはどうかと…。家業があったからこそ、自分は大学を出ることができました。それで自分で考えて店を継ぐことを決めました」
薬を販売するには専門の資格が必要だ。そのひとつが薬種商という資格で、都道府県知事が行う試験を受け、合格すると営業許可がもらえる。都道府県ごとに審査が異なり、沖縄は全国の中でも資格の取得が難しい地域だ。親泊さんは、店の仕事をしながら、年1回行われる試験の勉強を始めた。薬の成分から副作用、化学や計算式など、さらに町の薬店では販売できない病院の薬まで、薬事法に関わる法律と薬理と局方など、薬に関わるすべての分野を勉強した。店頭でお客様の生の声を聞きながら、薬の勉強を続けた。
「日々勉強が自分たちの仕事だと感じました。平成元年から勉強を始め、平成9年に薬種商の試験に合格しました」
医薬品の販売方法は、時代によって変わっていく。しかし、大切なのはお客様と相談して、ひとりひとりの症状に合った薬をセレクトしていくことだ。この基本は、昔から続くことで変わりはない。
「いかに正確な情報をお客様にご提供できるか。日常の生活にしても、食べ物にしても、マスコミや健康番組で100%の情報が伝えきれていません。本当の生きた情報を伝えるのが、自分たちの役割だと思っています」
大型店の出店ラッシュで、ディスカウントのドラッグストアでは、大量生産の薬が価格勝負で販売される。しかし、消費者が自分で判断しないといけないために、誤った情報を持っていると、良いと思って使ったものが、体を悪くする原因になることもある。
「自分たちは、かゆいところに手が届くような商売を心がけています」
親泊さんが店を継いでから21年目。
「薬の効き方には個人差があり、人によって同じ薬でも、効き方の違いが出てきます。それは、その人の治そうという力の差によるものです。病気になるのも病気を治すのも、基本的には本人の体です。ですから、うちでは、病気を治す体作りのお手伝いが大切だと考えています。
国際通りのバス停そばにある街の薬屋として、ちょっと時間の余裕があったら、座ってお茶を飲みながら、相談していける店でありたいと思っています」
病気になってから治すのではなく、病気にならない体作り。
予防医学の時代の今、親泊さんが経営する南陽薬品のような、気軽に相談できる地域密着型のお薬屋さんは、ますます存在感を増していく。