割増賃金はどんなときに発生する?

割増賃金には時間外労働・休日労働・深夜労働の3つの種類が存在します。

基本的に上記3つの割増賃金が発生する基準は労働法で定められており、

上限を超えたタイミングでそれぞれの割増率以上の支給が必要になります。


また時間外労働や休日労働を行わせるには前提として36協定の締結・届け出が必要です。


時間外労働の割増賃金の発生条件

法定労働時間

労働基準法では働く際のルールとして

一部の業種を除き1日8時間、週40時間を上限とすることを定めています。

このルールのことを「法定労働時間」と呼びます。

この法定労働時間を超えて働く部分を「時間外労働」といい、割増賃金が発生します。


時間外労働は法定労働時間を超えたら発生する

労働基準法で定められている法定労働時間(1日8時間・週40時間のいずれか)を超えた時間には

25%以上の割増率を増額し支給します。


一部例を上げながら説明したいと思います。


・週5日、8時間勤務で1日だけ10時間(2時間残業)の勤務となった場合

法定労働時間を超えた2時間については割増率を増額し支給しなければなりません。

また2時間の残業に対して別の日に2時間少なくし帳尻を合わせれば

割増賃金は支払わ無くても良いと考えがちですが、

1日8時間を超えた以上割増賃金は支払わなければなりません。


・週6日、8時間勤務の場合

1日8時間の勤務を超えた分だけを時間外労働(残業)と捉えがちですが、

仮に1日8時間、週6日勤務の場合は週48時間となるため

オーバーした8時間は25%の割増が必要となります。


・1ヶ月単位の変形労働時間制の場合

1ヶ月以内の変形期間における1週あたりの平均所定労働時間が1日8時間・週40時間を超えない定めをした場合は、

変形期間内の特定の週や日に、法定の労働時間を超えて所定労働時間を設定することができる制度のことです。

月末や月初などに業務が集中し、1週あたりの所定労働時間のバランスが取れない業務に利用されています。

この制度を導入するためには、単純に日ごとに帳尻を合わせながら1ヶ月あたりの平均が所定労働時間内に収まれば良いということではなく

事前に労使協定や就業規則を定め、1ヶ月以上前に計画を立て勤務表を作成することが必要になります。


1ヶ月単位の変形動労時間制の場合の時間外労働の考え方については通常よりも複雑になります。


A.1日については、8Hを超える勤務時間を定めた日はその時間、それ以外の日は8Hを超えて労働した時間を時間外労働とする。

B.1週間については上記Aの場合を除き、40Hを超える勤務時間を定めた週はその時間、それ以外の週は40Hを超えて労働した時間を時間外労働とする。

C.上記A、Bを除き、対象期間(1ヶ月)における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間を時間外労働とする。

上記A、B、Cを合計した時間が時間外労働の対象となります。


◆深夜労働の割増賃金の発生条件

午後10時から翌午前5時の間で働いた時間については通常時給に

25%以上の割増率を増額し支給します。


休日労働の割増賃金の発生条件

法定休日

労働基準法では働く際のルールとして

最低限として週1回・4週間を通じて4日の休日を与えなければならないと定めています。


休日労働は法定休日を下回ったら発生する

労働基準法で定められている法定休日(週1回・4週間を通じて4日の休日)を下回った休日労働に対し

超えた時間に35%以上の割増率を増額し支給します。

事前に振替休日として入れ替わっている場合は割増賃金を支払う必要はありません。

しかし休日労働を行い、事後に代休の取得となった場合は35%以上の割増率の支給が必要となります。


割増賃金は併用される場合もある

上記で説明した時間外労働・深夜労働・休日労働に関しては同時に起こる場合もあります。

例えば時間外労働がそのまま深夜時間を挟んでいる部分については25%+25%=50%の割増率の計算になります。

あるいは休日労働に深夜時間を挟んでいる部分については35%+25%=60%となります。

ただし休日労働に時間外労働を行った場合は35%+25%=50%割増とはならないので注意が必要です。

パターンは以下図の通りとなります。

全ての割増に以上がついていますが、これは法律では割増の最低率が定められており

企業によってはそれ以上の割増率を設定しても良いとなっているためです。


※大企業のみ対象と明記されている部分は現在の法律では

 1ヶ月60時間を超えた時間外労働には50%以上の割増額の適用は大企業のみが対象となっているためです。

 しかし、2023年4月からは中小企業においても対象となります。


短時間勤務の時間外労働や週休2日の休日労働の扱いは?

短時間のパートやアルバイトの勤務の場合も上記と照らし合わせて考えます。

例えば通常週5日間、1日に4時間勤務のパートの場合、仮に8時間の勤務になったとしても

法定時間内労働となり時給は通常時給となります。

あくまでも1日8時間または週40時間を超えたもの(法定時間外労働)にのみ割増賃金は発生します。


同様に週休2日の場合も、あくまでも法定休日(週1回・4週間を通じて4日の休日)を下回った休日労働にのみ適用になりますので、

仮に週休2日のうち1日が出勤になった場合でも割増賃金は発生しないことがあります。


時間外労働、休日労働の上限

36協定を締結したとしても基本的に時間外労働をさせることが出来る上限が決まっており

一般の労働者の場合1ヶ月45時間、1年360時間となっています。(臨時的な特別の事情を除く)

また月45時間を超えるのは年6ヶ月までとされています。


また大企業では1ヵ月の残業時間が60時間を超えた場合には50%以上の割増率を増額し支給します。

ただし代休休暇を取得した場合は25%以上の割増率となります。

現在は中小企業については一定期間の猶予があり対象となりませんが、

数年の間には中小企業も対象になる予定となっています。


◆割増賃金のまとめ

・時間外労働や休日労働をするためには36協定の締結・届け出が必要

・基本的に法定労働時間や法定休日の上限を超えたときに割増が発生する

・各割増の%は勤務状況によって組み合わされる。(ただし休日労働で時間外労働の割増は適用されない)

・36協定を締結していたとしても上限がある