言語聴覚士とは?話す・聞く・食べるのサポーター
言語聴覚士の仕事内容
言語聴覚士は病気や障害など何らかの理由で「話す」「聞く」「食べる」という行為が難しくなってしまった方を対象に、様々な支援を行う職業です。
英語では「Speech Language Hearing Therapist(スピーチ ランゲージ ヒアリング セラピスト)」として知られており、日本でもそれを略して「ST」と呼ばれることもあります。
「話す」「聞く」「食べる」行為は一見すると単純な動作のように感じますが、様々な原因によって引き起こされるため原因特定を行う必要があります。
治療の際には医師の診断・指示をもとに訓練プログラムを作成し支援を行います。
言語障害者への支援
言語障害とは
言語障害には何らかの原因によりうまく発音ができない状態の構音障害、会話のやり取りが成立しない状態の失語症があります。
構音障害
構音障害は脳卒中などの脳の病気や神経結合部の病気が原因で、うまく司令が出せない・筋肉が動かせなくなり正しく発音ができない症状のことです。
特徴としてはろれつが回らない・鼻にかかった声・発音がはっきりしないなどがあります。
相手が話す内容自体は理解しているため、文字の読み書きなどはできるのが特徴です。
失語症
失語症は脳卒中などの脳の病気によって「話す」「聞く」「読む」「書く」などの行為がうまくできなくなる症状のことです。
例えば「話す・聞く」行為の症状として、話そうとしても言葉が出てこない・言っていることが意味不明・相手の言っていることが理解が出来ない、などがあります。
「読む・書く」行為の症状としては文字は読めるが理解できない、自分で文字を書くことが出来ないなどの症状があります。
構音障害との違いは発声するための筋肉や舌に障害はないことです。
言語障害へのリハビリ方法
構音障害の方へは言語訓練を行います。
言語訓練では発音に使用する舌や筋肉などを訓練し運動能力を向上させることで正しい発音ができるように訓練を行います。
病気により発音が必要な筋肉が動かせない場合は、通常の発音では使用しない部位・筋肉・方法を利用して近い音を出せるように訓練します。
失語症の方へは「標準失語症検査」という検査を行い、結果に基づいてリハビリ方法を決定します。
失語症の方のリハビリは長期間に渡ることが多く「急性期」「回復期」「維持期」それぞれに合わせたリハビリを行います。
基本的には「聞く」「話す」「読む」「書く」それぞれのコミュニケーション方法を使用し、ゆっくり根気強く患者と話し合いながら訓練を行います。
患者は今まで可能だったことが出来なくなったことにより、強いストレスを抱えていることもあります。
そのため患者を焦らせることのないように気持ちに寄り添いながらサポートします。
また病院だけではなく家族同士でも訓練が行えるよう自宅でできる方法や注意点などを指導し協力して患者を支援します。
音声障害者への支援
音声障害とは
通常発声を行うには肺に入った空気を声帯器官に送り込み、声帯を振動させることで音声を出すことができます。
しかしその声帯が何らかの理由で振動しづらい・できない状況となり音声が出づらい・出せない状況を音声障害といいます。
音声障害はポリープができる・咽頭がんなどによって声帯が傷つくことが原因で起きる症状です。
その他にも歌手の方や大きな声を出す仕事など職業病として起こることもあります。
音声障害へのリハビリ方法
音声障害のリハビリ方法には音声治療と衛生教育があります。
音声治療
音声障害へのリハビリ方法として音声治療があります。
音声治療では、正しい声帯の使用方法を指導し声帯への負担を軽減することで改善を図る治療法です。
正しい声帯の使用方法を繰り返し習慣化させることで正しい方法を自然に使えるようにしていきます。
衛生教育
衛生教育では、声帯に負担のかかる行動や予防法を指導することをいいます。
具体的には大きな声を出さない、加湿を十分に行うなど健康な声帯を保つ方法を指導します。
摂食・嚥下障害者への支援
摂食・嚥下障害とは
摂食・嚥下障害とは、何らかの原因で食べる行為(摂食)や食べたものを飲み込む行為(嚥下)が困難となる障害のことです。
高齢者などに多く見られ、これらの機能が低下すると間違えて器官に入ってしまったり、肺炎などの呼吸器合併症を起こす原因になります。
また十分な栄養と取れない原因ともなり、栄養失調や体力の低下・免疫機能の低下の可能性もあります。
原因には筋力の低下や神経機能の問題の他、心因性の病気が原因の場合もあり医師の診断の上リハビリの方法を検討します
摂食・嚥下障害へのリハビリ方法
摂食障害のリハビリ方法には間接訓練と直接訓練があります。
間接訓練
間接訓練は食べ物を使用せず行う訓練のことをいいます。
物を食べる際に使用する部位(舌・口・喉)の器官や筋肉を動かしたり、マッサージをすることで機能回復を図ります。
直接訓練
直接訓練ではゼリーなどの咀嚼の負荷が低い食べ物を使用し実際にトレーニングを行います。
そこから徐々に通常の食事へと段階を上げていくことで機能回復を図ります。
嚥下障害のリハビリ方法には口腔ケア・嚥下体操・頭部拳上訓練があります。
口腔ケアでは口の中を清潔に保ち、誤嚥性肺炎など別の病気の予防を行います。
嚥下体操や頭部拳上訓練では嚥下するのに必要な筋力をトレーニングし嚥下機能の回復を図ります。
言語聴覚士になるには
言語聴覚士になるには国家資格を取得する必要があります。
受験資格を得るには3つのルートがあります。
・指定された言語聴覚士養成施設(大学・短大・専門学校)で3年以上学ぶ
・通常の大学で指定科目を履修後、指定養成所にて2年以上学ぶ
・通常の4年制大学を卒業後、指定養成所にて2年以上学ぶ
言語聴覚士の職場
医療施設
医療施設では病院やリハビリテーションセンターなどで活躍しています。
病気や怪我によってリハビリが必要となった患者が対象で、医師を含めた様々な医療関係者と連携しながら治療に当たります。
原因や症状によって治療方法が異なるため、領域ごとに分けて働く場合もあります。
福祉施設
福祉施設では介護老人福祉施設やデイケア施設など高齢者を対象とした職場や、心身障害者福祉センターや知的障害児施設などがあります。
前者では高齢者を対象としており、後者は障害を持った子供が対象となります。
それぞれ働く場によって対象や支援内容が変わってくるため、自分の希望する領域を選択することになります。
言語聴覚士の仕事で役立つ資格・スキル
認定言語聴覚士
認定言語聴覚士は日本言語聴覚士協会が立ち上げた資格制度で、言語聴覚士のスキル向上を目的とした資格です。
受験には満5年の臨床経験、指定された研修を修了する必要があり比較的ハードルが高くなっています。
資格を取得することにより、専門分野のエキスパートとして認知され昇給や昇格、転職の際に有利に働きます。
まとめ
以上言語聴覚士についてでした。
一般的なイメージとしては「話す」に特化したリハビリの職業だと思われがちですが、実際には「聞く」「食べる」という分野でもサポートしているのが言語聴覚士の方々です。
そのため、病気や怪我の方だけでなく先天性の障害の方や高齢者など様々な方のサポートを行っています。
医療関係施設だけでなく福祉施設などでも多くの方が活躍しています。
リハビリを支援する上で大切なことは良好な人間関係を築くことが大切だと言われています。
相手のことを考えられる姿勢や人との関わりが好きという方は向いているかもしれません。
興味のある方は挑戦してみてはいかがでしょうか。
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